「UA値は0.46です」「断熱等級は6です」……。 住宅会社を回ると、こうした専門用語が次々と飛び出してきて、戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。

「数字が小さいほうがいいの?」「等級が高いと何が変わるの?」 そんな疑問を抱えるのは、あなたが真剣に家づくりに向き合っている証拠です。

実は、断熱の基準には「ただ数値をクリアすればいい」というだけではない、大切な「住み心地と家計のバランス」があります。今回は、専門用語をできるだけ身近な例えに置き換えて、建築士の視点から間違いのない断熱の見方を解説します。

UA値って何?「家の燃費」を左右する数字の正体

住宅展示場などで「UA値(ユーエーチ)」という言葉を耳にすることが増えたのではないでしょうか。専門用語で少し難しく感じますが、実は家づくりにおいてもっとも大切な指標の一つです。

一言でいうと、UA値とは「家からどれだけ熱が逃げやすいか」を示す数値です。

分かりやすく例えるなら、「ダウンジャケットの厚み」のようなものだと考えてください。お察しのとおり、UA値が家の空調コストに大きくかかわってきます。

車を選ぶときに燃費を気にするように、家を選ぶときもこの「建物の燃費」が非常に重要になります。その一つの指標となるのが、UA値となります。(燃費はUA値だけで100%決まるわけではありませんが、UA値によるところが大きいです。)

UA値の最大の特徴は、「数値が小さければ小さいほど、断熱性能が高い(熱が逃げにくい)」ということです。

例えば、真冬に薄手のシャツ一枚で外に出ると、体温がどんどん奪われて寒く感じますよね。これが「UA値が大きい(断熱性能が低い)」状態です。逆に、高品質なダウンジャケットを羽織っていれば、体温を逃がさず、外の寒さを遮断してくれます。これが「UA値が小さい(断熱性能が高い)」状態です。

私たち晃榮住宅が家づくりを行っている福岡県久留米市周辺は、夏は非常に蒸し暑く、冬は筑後平野特有の冷え込みもあります。この地域で一年中快適に、そして光熱費を抑えて暮らすためには、この「家の燃費」であるUA値をしっかりと見極めることが、失敗しない注文住宅づくりの第一歩となります。

断熱等級?……基準がいっぱいで迷う方へ

住宅会社を巡っていると、「うちは最高ランクの断熱等級4です」「これからは等級6が標準です」など、会社によって全く違う説明をされ、混乱してしまう方が非常に多いのが現状です。

実は、日本の断熱基準はいま、歴史的な転換期を迎えています。私たち晃榮住宅が拠点とする福岡県久留米市でも、この基準の変化を正しく理解して注文住宅を建てることが、数十年後の資産価値や暮らしの質を左右するといっても過言ではありません。ここでは、プロが注目している「本当の物差し」について詳しく解説します。

2022年に激変した!日本の断熱等級の「裏事情」

断熱等級、これは国が定めた基準です。これまで、日本の断熱基準は世界から大きく遅れていると言われてきました。2022年までは、国は、「断熱等級4」を最高ランクとしていました。これは先進国の中では驚くほど低いレベルだったのです。

しかし、2022年にようやく「等級5・6・7」という上位等級が新設されました。さらに、2025年からは「等級4相当」の省エネ基準への適合が法律で義務化されます。つまり、これまでの「最高ランク(等級4)」は、2025年以降に建てる家にとっては「最低限守らなければならない、一番下の基準」になるのです。

「最高ですよ」という言葉に安心して等級4で建ててしまうと、完成した瞬間から「法律ギリギリの性能の家」になってしまうリスクがあります。せっかく福岡でこだわりのマイホームを建てるなら、将来を見据えた基準選びが不可欠です。

福岡県や久留米市周辺で家を建てる場合にそれぞれの断熱等級で必要とされるUA値があります。

「HEAT20  G2グレードとは?」

さて、もう一つ、断熱性能を表す指標として、HEAT20が定めるものがありっます。私たちは、国が定める前から断熱性能の話をしていたのでよくは話として使っていました。この指標は、研究者や専門家で構成される「HEAT20(ヒート20)」という民間団体が定めたより厳しい基準です。中でも「G2グレード(断熱等級6相当)」は、これからの注文住宅においてもっともバランスが良いとされています。

さて、UA値、断熱等級、HEAT20といろいろ出てきて、何がなんなのか分からなくなってきたかと思います。これをまとめてみたのが、下の図です。

これを見て頂くと、断熱等級、HEAT20、UA値の関係がよくわかると思います。

福岡・久留米の気候に最適な断熱性能とは?

断熱性能は高ければ高いほど良い、と思われがちですが、実は「地域の気候」と「コスト」のバランスを考えることが非常に重要です。福岡県久留米市は、全国的な区分で見ると「6地域」という比較的温暖な地域に分類されますが、盆地特有の夏の猛烈な暑さと、冬の底冷えの両方への対策が求められる、実は家づくりの難易度が高い地域でもあります。

私たちが手掛ける注文住宅において、なぜ特定の数値を目標にしているのか。その理由を、経済性と健康の両面から深掘りしてみましょう。

「UA値0.46」が家計に一番優しい理由

多くの方が「建築費」を一番気にされますが、家づくりで本当に大切なのは、建てた後の光熱費やメンテナンス費を含めた「トータルコスト」です。

松尾和也先生のメソッドに基づいたシミュレーションを行うと、ここ福岡・久留米エリアにおいて、もっとも投資対効果(コスパ)が良いのがUA値0.46(HEAT20 G2レベル)であるという結論に達します。

数値シミュレーション上の結果としても、コスパがいいと出ているのですが、私たちが実際に建てていての実感としてお話しすると、分かりやすいかもしれません。UA値が0.46以下になってくると、30坪前後の家なら、14畳用のエアコン1台で空調が効かせられるくらいの断熱性のになります。通常ですと、3LDKなら4台、4LDKなら5台のエアコンが必要になりますが、それが1台で済むようになります。

エアコン1台になると何がいいのか。それだけ空調に係る電気代が下がります。そして、多くの方が見逃していますが、エアコンの買い替え費用です。エアコン1台の取替も、最近は金額があがり、20万円近くになってきました。それを寿命の10年ごとに買い替えることを考えると、いかがでしょうか。ランニングコストの差が分かるかと思います。

もちろん、さらに上のUA値0.26(G3レベル)を目指すことも技術的には可能ですが、そこまで断熱材を厚くしたり、サッシをさらに高性能にするための追加費用(イニシャルコスト)がかかります。その追加費用をその後の光熱費の削減分(ランニングコスト)で回収するには、非常に長い年月がかかってしまいます。

つまり、「建築費のアップ分」と「光熱費のダウン分」が最も効率よく交差するポイントが、UA値0.46なのです。これから30年、40年と住み続けることを考えたとき、G2を選択し、予算にもう少し余裕があれば、G2.5UA値0.36程度を目指すことが、結果として一番お金が残る「賢い家づくり」になると私たちは確信しています。

冬のヒートショックを防ぎ、健康を守る断熱

断熱性能は、お金の問題だけでなく、家族の「命」にも直結します。特に冬場のトイレや脱衣所でのヒートショックは、断熱性能の低い家で起こりやすい深刻な問題です。

UA値0.46を確保した家では、リビングだけでなく家全体の温度差が小さくなります。例えば、夜中にトイレに起きた時や、お風呂上がりの急激な温度変化が抑えられるため、心臓や血管への負担が劇的に軽減されます。

さらに、断熱性能が高い家は、部屋の上下の温度差(足元が寒くて頭がのぼせる状態)も解消されます。私たちが手掛ける久留米の住まいでは、エアコン一台で家中がほんのり暖かい状態を維持できるため、冷え性やアレルギー症状の改善を実感されるお客様も少なくありません。

「健康でいられること」は、将来の医療費を抑えることにも繋がります。断熱性能を高めることは、家族への最高のプレゼントではないかと感じています。

窓の選び方一つで、快適さは劇的に変わる

断熱のグレードを語る上では余談になりますが、合わせて知っておいていただきたいのは窓のことです。

家の中で最も熱が逃げ、また入ってくる場所はどこだと思いますか? 正解は「窓」です。冬に暖房の熱が逃げる割合の約6割、夏に外の熱が入ってくる割合の約7割が窓からと言われています。

どれだけ壁の断熱を厚くしても、窓の性能が低いと、そこからエネルギーがダダ漏れになってしまいます。例えるなら、「高級なダウンジャケットを着ているのに、チャックを全開にしている状態」と同じです。

私たち晃榮住宅が手掛ける注文住宅では、樹脂サッシや高性能なLow-Eガラスを標準的に採用しています。これにより、冬の結露を抑えるだけでなく、窓際の「ゾクゾクする寒さ」を解消します。窓を単なる「明かり取り」ではなく、「熱をコントロールする装置」として捉えることが、一級建築士としてのこだわりです。

断熱をしたら、窓の配置や、庇の取り方が大切になる。太陽の熱をコントロールする「パッシブデザイン」

高断熱住宅を作る際に、私が最も大切にしているのが「太陽に素直な設計(パッシブデザイン)」です。これは、特別な機械を使わずに、太陽の光や風といった自然エネルギーを最大限に活用する手法です。

例えば、冬は南面の大きな窓から太陽の熱をたっぷり取り込みます。この熱量は、実は電気代のかからない「天然の暖房機」になります。しかし、逆に夏は、その熱が入ってくると家の中がサウナ状態になってしまいます。そこで重要になるのが「庇(ひし)」や「アウターシェード」です。

このパッシブデザインをやっていないと、最高性能の高断熱住宅を作っても、逆に失敗します。これは、少し考えてみればわかります。夏場の日差しが暑い車を思い浮かべてください。空に向かってフロントガラスがあり、東西南北の4面が窓です。仮に車の断熱性能が最高レベルだったとしましょう。熱がほぼ抜けない車に、外から太陽の強い日差しが差し込んだら、ますます灼熱地獄になってしまうことが、想像できます。下手な高断熱住宅は、このようになってしまいます。

このような高断熱住宅に失敗は、実は業界でも効くようになってきました。夏エアコンが効かない高断熱住宅問題です。

そういったこともあるので、久留米市のような夏が暑い地域では、「窓の高さ10に対して、庇の出幅を3にする」といった緻密な計算を行い、夏の直射日光を遮りつつ、冬の低い太陽光は取り込む工夫を施します。UA値という数字には表れないこの「日射遮蔽(遮る)」と「日射取得(取り入れる)」のバランスこそが、本当に心地よい住まいを作る鍵なのです。

最近は宣伝文句のように、断熱性能の数字をアピールする会社が増えていますので、この点は注意してください。

まとめ:数値の先にある「家族の幸せ」のための家づくり

今回は、UA値や断熱等級の見方、そして数値には表れない設計の大切さについてお伝えしてきました。家づくりを始めたばかりのときには、どうしても「UA値が0.1でも小さい方がいい」「等級が一番高いから安心」と、数字そのものが目的になってしまいがちです。

しかし、一級建築士として多くの住まいづくりに携わってきた私が一番お伝えしたいのは、「数値はあくまで、家族が幸せに暮らすための手段である」ということです。

「ちょうどいい性能」が、暮らしにゆとりを生む

私たちが推奨している「HEAT20 G2(断熱等級6)」や「UA値0.46」という基準は、単に高性能を競うための数字ではありません。ここ福岡・久留米の気候において、建築費というイニシャルコストを抑えつつ、冬の寒さから家族の健康を守り、夏の猛暑でも光熱費を気にせず快適に過ごせる、いわば「家計と健康のベストバランス」なのです。

無理に過剰な性能を求めて建築費(イニシャルコスト)が跳ね上がり、日々の生活が苦しくなっては本末転倒です。逆に、目先の安さに惹かれて性能を妥協すれば、将来の光熱費や医療費という「目に見えないコスト」が膨らみ続けます。

松尾和也先生の教えにある通り、30年、40年という長いスパンで考えたときに、「一番お金が残る選択」をすること。それが、これから注文住宅を建てる皆さんに私たちが提案したい誠実な家づくりのあり方です。

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